兵庫県赤穂市の文化財 -the Charge for Preservation of Caltural Asset ,Ako-
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有年牟礼・井田遺跡の焼失竪穴建物

 赤穂市教育委員会では、平成18年度から、有年土地区画整理事業に伴う全面発掘調査を行っています。対象遺跡は、事業地西側の有年原(うねはら)・クルミ遺跡、東側の有年牟礼(うねむれ)・井田(いだ)遺跡です。今回のコラムは、このうち有年牟礼・井田遺跡で見つかった、弥生時代の竪穴建物について、お話をしたいと思います。

 有年牟礼・井田遺跡は、赤穂市を南北に流れる千種川の支流、矢野川の左岸にあります。JR有年駅の北東といった方が、みなさんにはわかりやすいかもしれません。

 この遺跡では、弥生時代中期(およそ2,100年前)の竪穴建物跡、溝跡、穴跡や、古墳時代後期の竪穴建物跡、室町時代の柱穴跡群などが発見されたほか、当時の地形がかなりの程度明らかになっています。
 このうち、弥生時代中期中葉〜中期後葉(およそ2,100〜2,000年前)の竪穴建物は2棟見つかりましたが、両者とも火事で焼けてしまった痕跡を残していました。
 下の2つの写真が、それぞれの焼失竪穴建物跡の様子です。


平成19年度に調査した焼失竪穴建物跡。


平成20年度に調査した焼失竪穴建物跡。

 このように、両者ともに、丸い竪穴建物床面全体に炭面が広がり、その上には焼けた土(焼土)がいくつかブロック状に載っていました。
 これらの建物跡からは、多くの土器片が見つかりましたが、いずれもたいへん小さなもので、突然の火災によって、使用していた家財道具(土器など)を持ち出す暇がなかったわけではなさそうです。逆に、意図して火を放ったのかもしれません。

 建物内の炭面は、写真では真っ黒に見えますが、実際には
(1)細かい繊維状の炭
(2)材木のような炭材
があります。


繊維状の炭


焼土、材木のような炭材、炭面の関係

 実は、このように建物全体に炭が残るような焼失の状況は、兵庫県内でも、それほど知られているわけではありません。逆に、岡山県には比較的見られるようですので、もしかしたら岡山県のムラと似たような建物を建てていたのかもしれません。

 ところで、発掘で見つかる炭は、かなりの偶然によってできたものです。木材は、完全に焼けてしまうと灰になって無くなってしまうので、発掘では見つかりません。また逆に、ほとんど燃えない木材の場合は、土によって分解されてしまうので、これもまた見つからないのです。
 つまり、遺跡で見つかった炭は、木材がしっかりと燃えるくらい火を受けた状態で、かつその後に酸素が無くなり、不完全燃焼になったという偶然の産物と言えます。

 しかし今回の調査で見つかった炭面は、偶然の産物とはいえ、2棟ともまったく同じ状態で見つかっていることから、本当の意味での偶然とは言えないでしょう。これは、建物の構造に原因があったのだと考えています。

 現在のところ、仮説ではありますが、この建物は土葺き屋根であったのではないか、と考えています。土葺きとは言っても、茅葺きの屋根に土を貼るもので、土貼り屋根と言ってもいいかもしれません。

 その理由として、
(1)建物の内部に埋まっていた土が、徐々に堆積していったようなものではなく、当時の地面と同じ質であったこと。つまり建物内部の土は、建物が焼けてから自然に埋まったものではないことから、屋根に葺かれていた土であると考えています。
(2)炭の状況。炭化するほど焼けていた木材は、土屋根が上から落ちてきてパックされ、不完全燃焼になったと考えることが、合理的です。
(3)炭面と土との上下関係が、複雑になっていること。「火事を消すために土をかぶせた」という説では、炭面の下に土があってはいけませんが、下の写真のように、炭面の上に土が載り、さらに炭面が載るといった様子も観察されています。これは屋根の崩落時に屋根が反転して落ちてしまったと考えています。


炭面の上に土が載り、その上に炭面が載っています。

(4)屋根材(繊維状の炭)があること。普通、茅葺屋根の場合は、縦葺きだけで十分ですが、横葺きもしているようです。

 などが挙げられます。このように、今回の調査によって、当時の竪穴建物の構造について、新知見が多く得られました。今後の整理調査、分析などによって、詳細は明らかになるはずです。

 なお、今回出土した炭や炭化材は、樹種同定や放射性炭素年代測定を行う予定です。樹種同定によって、その材が使用された部位を推定することができますし、年代測定によって、建物や土器の年代が明らかになります。

 今後の整理調査にご期待ください。


炭面を取り、炭化材のみを出したところ。


炭等をすべて取り除いたところ。柱穴などが見つかりました。


建物床面中央で見つかった、炉跡の断面。

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巻頭写真1
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