兵庫県赤穂市の文化財 -the Charge for Preservation of Caltural Asset ,Ako-
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市指定文化財
三味線製作技法
しゃみせんせいさくぎほう

区分
選定保存技術
種別
工芸技術
数量
1人
所有者
保持者 目坂進  
認定年月日
平成7年5月25日
認定番号
5
説明
   棹
 棹には延棹と継ぎ棹がある。継ぎ棹の三つ折れも天明頃にはみられたが、二つ折・三つ折の継ぎ棹が普及するのは、三味線の持ち運びが必要となる近代になってからである。現在では三つ折棹が製作の標準となっている。
  1. 用材の選定
     紅木(コーキ)・紫檀(シタン)・花梨(カリン)などの輸入品使用、古来の棹材は樫であるが、柔かく、乾燥不足だと狂いがくる。小唄の稽古用に使われる程度である。輸入材の最上は紅木でトチ(うろこ=波形の縞模様)のあるものを最高とする。年輪をあらわすトチは、堅くて脂ののったものがねばりのあるよい音を出す。トチのないものは人参とか芋紅木とかいわれてランクが落ちる。柴檀・花梨は材質が堅く狂いもこない。艶が出て美しく音色もよい。なお小唄用の柔かい音を出す材として白紅木も珍重される。用材は現地で切断したものが輸入され、これを1年以上自然に放置して乾燥させる。
  2. 製作の工程
     荒木取りの寸法は、上棹9寸、中棹1尺2寸5分、下棹5寸6分、天神(海老尾)5寸7分で、用材に年輪を合せながら寸法を割付し、鋸で引いて、2分鑿(ノミ)で角の穴をあけ、糸鋸を通して上中下棹に切り離す。原本は芯の方が柔かく、皮目の方が堅い。二の糸・三の糸の側がよくかんべり(摩滅)するので、三の糸の方側に堅い皮目がくるように切取る。3つに分けた材料を手斧・叩き鑿を使って大体の形どりをし、鉋(カンナ)で表を平らにする。
     次に、棹の継ぎ手を作る。まず、継ぎ手になる部分の肌(表面)を平らにし、ホゾ穴は1分と2分の突き鑿を使い、錐(キリ)を使ってホゾ金を入れる。紅木・柴檀の高級品はホゾ金に金・銀を使用する(金ホゾの三味線)。ホゾ溝には段溝、二枚溝、一枚溝の3様があり、高級品には段溝、二枚溝などを彫るが、稽古用でないものもある。
     またホゾが2本(ホゾ穴2つ)のものもある。二本ホゾ、二枚溝は棹の反りを防ぐ効果がある。二本ホゾは細工がむづかしく手間がかかるため、最高級品以外はこの技法は用いない。上中下の棹を1本に組み、まず上場に鉋をかけ、次にまるめ鉋で背(裏)を整える。
     中木(中子=胴の中を貫通する棹につながる細い棒状のもの)は下棹に接合するため棹と同材がよい。これは鋸・鉋・先丸鉋・小刀・やすりによって作る。できると下棹に膠(にかわ)で継ぎ合せる。終ると鳩胸をきめ、猿尾(鼻)を作るが、猿尾はアールをあててカープをきめ、小刀とやすりで作る。
     次に天神(海老尾)を作るが、まず糸(金)倉をあけて、渡り(畔)の寸法と位置をきめる。次に天神の両側の小磯をきめ、三味線にあった天神の大きさを決め、裏をナマゾリ(小刀の反ったもの)で削ぎ、次に天神のムクリ(甲)を削って月形をきめる。
     終ると乳袋を作る。棹の長さは変らなくても、その大さ、胴の大きさによって、乳袋と鼻を調節する。乳袋の縦の寸法は、細口(長唄)で1寸1分、小唄で1寸1分5厘、津軽で1寸2分〜1寸2分5厘である。
     悼肌の仕上げには1寸と1寸2分の突き鑿を用い、堅木はきつい刃、柔かい木は傾斜のゆるい刃のものを使う。仕上ると天神を継ぎ合せる。
     天神には糸倉に糸巻の穴(金倉)をあける。「焼き抜き」を真赤に焼いて渡りに穴をあける。二の糸巻の穴は真直に、一・三の糸巻の穴は傾斜を付けて間を広くする。糸を調節するための手が入るように。穴には金輪を嵌める。
     悼の仕上げは磨きである。まず青砥で木の目を落し(殺す)、次に合せ砥で更に磨き、その後椿油をぬってうち粉(合せ砥の粉)で仕上る。この際関東では自然の鈍い光を出すようにし、関西では最後に漆を入れて砥の粉で艶とりをした。
   胴
  1.  胴の大きさは、小唄、津軽、常磐津、浄瑠璃三味線によって異なり、また清元、常磐津、津軽、浄瑠璃三味線は男女の性別によって寸法が違う。長唄三味線は、長手(縦)が6寸5分、短手(横)が5寸9分である。
  2.  胴の材料はすべて花梨である。木取りは胴の表面に年輸が美しく出るようにするために原木は直角に輪切りにし、次に縦に切断し、皮目の方が胴の表面に出るようにする。
  3.  胴の内側は窪んでおり、高級品となるとそこに波形の綾彫りをする。中子にまで綾彫をするものもある。綾彫は当然高級品となるが音響効果がよいという。
  4.  胴仕立てには必ず漆を使う。皮を何度も張り替えるため、表面の傷みを漆で防御するためである。但し浄瑠璃三味線だけは使用しない。
  5.  胴皮、犬猫の皮質の違い、製造者、作業者、製造過程、方法に違いがあって、一枚として同じものはない。製造後1年ぐらい乾燥させたものがよい。皮は三味線の種類によって異なる。津軽は秋田犬、土佐犬。長唄は猫というように。猫皮は優しくやわらかい音色を出し遠音がきくが、犬皮は音色がかたい。総体として太陽の光を反射するものよりも、吸収する感じのものの方が良質のように思う。
  6.  糊はもち米で餅をつき、延し餅とし、少し固くなった頃に鉋で削って、しばらく干し、臼で2〜3回ひいて粗目の粉にする。これを乾燥させて保存しておく。使用分量に熱湯を入れ、2時間ぐらいふくらせる。次に炭火で1時間ほどかきまぜながら加減をみて、光沢がでるまで炊く。これを板の上で竹ヘラでねって使う。
  7.  胴皮張の要領、皮の毛穴をいかに開いてやるかにポイントがある。皮質をよく見極めて皮のさえを出す(毛穴を開く)ことが重要である。従って皮質の違いにより張り方も異なる。音色も違ってくる。一杯強く張ると音色はよいが破れ易い。緩く張ると長持ちするが音が悪い。
  8.  胴皮の張り方は、まず胴の大きさに合わせて皮の端を折り曲げ、そこに補助皮を挟んで栓でとめる。これを二枚台の上に置き、経口(胴の縁)に糊をつけて皮を張る。皮につけた栓と台の棒とに紐を2重にかける。二枚台の間に楔(くさび)を打ち込む。3重にかけた紐に捩をかけながら、皮の厚さが均等になるように張り具合を調節する。音の調子は、爪で弾いて確かめたり、紐の張り具合で判断する。
  9.  張り終わると、皮の面を下にして上から吊し、炭火の上で乾かす。長唄三味線で30分、義太夫、津軽三味線だと1時間ほどかかる。この際火の粉がかからないように、糊のついていない部分を、厚さ1cmぐらいに折った和紙で覆っておく。周囲の糊が乾くと、胴にかけた紐や皮を挟んだ栓などすべてを外す。
  10.  側面の皮をめくり、滲み出た糊を削り取り、新たに側面に糊を付けてヘラで皮を延ばしきめつける(張りつける)。糊が乾くと罫引(ケビキ)で線を付け、ナイフで余分な皮を切り除く。終わると撥皮(長唄は半円形、津軽は長方形)を不易糊で張り付ける。なお長唄三味線に犬の皮を張った場合は、猫皮に似せて乳あとを、火箸の先の溶けた蝋によってつける。
  11.  工程最終の悼と胴の組立を仕込むという。この場合最も難しいのは、糸の高さである。悼の上場より胴の表皮面すなわち根緒の方を下げると音がまとまる(堅くなる)。根緒の先をあげると胴皮面に糸がそわず、皮面から糸が離れて高くなるため弾きにくい。しかし丸味のあるよい音色がでるとされ、玄人は高くする人が多い。素人は根緒の先を少し下げて糸が胴皮面にそうようにし、弾きやすくする。弾き手の好みや腕を判断して調節することが難しいのである。
  選定理由
 三味線(三弦)は、日本の代表的な民俗楽器であり、浄瑠璃・常磐津・清元から、長唄・小唄に至るまで、邦楽・邦舞・民俗芸能の楽器として、古くから、且つ広く庶民の生活とのつながりを持ち続けて来た。しかも、現在、緻密で質の高い三味線製作が要求されている。
 工芸技術は地味であるだけに、人々の耳目に触れる機会が乏しい。それだけに赤穂に伝承されている三味線の全工程を一貫製作する三味線製作を赤穂市選定保存技術に選定し、日坂五郎(H.19.2.2死亡により認定解除)、目坂進を保持者として認定することは適当であると考えられる。
選定要件
ア 伝統的な用材を使用すること。
イ 伝統的な方法と用具によること。
ウ 伝統的な胴皮張り技法を保持すること。


(上記は指定時の文章です)

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巻頭写真1
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