兵庫県赤穂市の文化財 -the Charge for Preservation of Caltural Asset ,Ako-
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市指定文化財
三十六歌仙絵扁額
(付)布袋図絵馬 1面
さんじゅうろっかせんえへんがく
(つけたり)ほていずえま いちめん

区分
有形文化財
種別
歴史資料
数量
6面
所有者
 周世自治会
(管理者)歴史博物館  
指定年月日
平成11年11月19日
指定番号
35
説明
 この扁額は、寛文6年(1666)浅野長直によって、赤穂の周世にある高雄山の神護寺に奉納されたものである。6枚の扁額のうち2枚の裏面には、下記のような奉納当初と考えられる銘文が見られる。その他の4枚にもほぼ同様の銘文が書かれているが、それらは、6枚が一体の扁額であることから、後年当初の銘文に倣って書かれたものと考えられ、その書体は粗放である。
 扁額絵は、藩主の奉納物にふさわしく、板面に金箔を貼りつめ、その上に扁額1枚に6名ずつの歌仙が濃彩によって描かれている。社殿に常に掲げられていたことから痛みが進行しており、金箔地がほとんど剥離し、各歌仙ごとに金箔地の上に書かれていた墨書の和歌は、各所に文字がわずかに散見されるだけである。歌仙絵は上質の顔料の使用によるためか比較的損傷を免れてはいるが、10名余の歌仙は剥落が大きく、その中の4名は輪郭線を残すだけである。
 各歌仙がやまと絵的手法によりながら、それぞれに個性豊かな相貌で表されていることから、この絵が江戸時代初期の作風を伝えるものであることは明らかである。扁額裏に記された前原自久斎という画者については、現在のところ画歴等を知る手がかりが見当たらないが、土佐派などのやまと絵系の画人に学んだ画技の優れた人物であったことが考えられる。
 この扁額の歌仙絵は、伝統にしたがって藤原公任選の二十六歌仙を、歌合せ形式に描いている。したがって、6枚の扁額は3枚ずつ左方と右方にわかれて歌仙が並べられ、左方は柿本人麿、右方は紀貫之にはじまり、左右相対座する形となる。
 各歌仙の上部金箔地の和歌は、今はわずかに散見されるだけであるが、額裏に記された里村仍春法橋の筆蹟であり、江戸時代初期にふさわしい能書であることがうかがえる。里村家は室町時代よりの著名な連歌専門の一族である。江戸時代に入ると、「連歌師」は連歌のことを司る幕府の職名となり、世襲の一家となったが、仍春はその家系に連なる人物であり、この扁額奉納の寛文年間といえば彼の円熟期でもあり、当時、江戸城などでの「百韻連歌」にも上席で名を連ねている。
 以上のようにこの扁額は美術史的にも価値の高い作品であることは十分に認められるが、赤穂市においては、この作品の歴史的資料としての価値をより高く評価すべきであろう。
 冒頭に述べたように、この扁額の奉納者浅野長直は、浅野赤穂藩の初代藩主である。五奉行の一人浅野長政の孫の長直が赤穂に入国して藩主となったのは正保2年(1645)であるが、入国後の領主としての手腕は見事である。赤穂城築城の後、やがて世に赤穂塩の名を広めた新製塩法の導入や塩田拡張、さらには新田開発や水道敷設など、殖産興業と新しい町づくりの為の目覚しい事績を残した。神護寺の三十六歌仙絵扁額は、この偉大な長直の信仰心の篤い一面をも見せてくれるものでもあり、また参勤交代で幾度かの出府の折りの、彼の江戸での人間関係の一面をも知らせてくれる貴重な資料のひとつである。

扁額裏(右一枚目及び左一枚目)

    播州赤穂群周世
    高雄山山王御宝前

     奉寄進
    御寶前如意安全所

     寛文丙午年九月吉日源長直

          哥筆者
           里村仍春法橋
          畫者
           前原自久斎
    (注) はじめの2行と「奉寄進」以下の7行とは書体が異なる。
       神護寺に運ばれてから書かれたのがはじめの2行であろう。

   (付) 布袋図絵馬 1面
 本絵馬は、周世高雄山神護寺に奉納されたもので、赤穂浅野家の家老であった大石内蔵助が奉納したものと言い伝えられている。図柄は布袋唐子図で、剥落は進んでいるものの全体の図柄は比較的はっきり認識できる。表面に「大石内蔵之介良雄」の名が墨書きされていることから、内蔵助自らが描いたか、もしくは寄進したといわれている。しかし、現状では「内蔵之介」しか判読できず、奉納の月日も「七月日」だけが判読でき、年号は読み取れない。過去の調査では、年号の部分は「天和□年」と読めたとある。これが、天和であると仮定すれば、西暦1681〜84年となる。大石良雄は万治2年(1659)の生まれなので、この絵馬を奉納したとき22〜25歳であったことになる。
 神護寺は、当地が赤穂城の東北の鬼門にあたることから、山王権現を守護神として祀るため、浅野長直によって再建されたものである。そのため、同藩の家老をつとめた大石家との関係が深く、同家から手水鉢や石灯籠が寄進されている。これらの経緯から、本絵馬の大石内蔵助伝承が残されたと思われる。
 本絵馬自体は、かなり絵心のある者の筆によるものであるが、奉納者が特定できないうえ、制作年代が明らかではなく、内容的にも文化財的価値は少ないため、単体での文化財指定は困難である。しかしながら、市指定の二十六歌仙絵扁額と同木箱に保存格納されており、また、前述の山王神社と浅野家・大石家とは関係が深く、両者の密接な関係を示す資料となりうることから、三十六歌仙絵扁額の付(つけたり)とすることが妥当である。


(上記は指定時の文章です)

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巻頭写真1
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