兵庫県赤穂市の文化財 -the Charge for Preservation of Caltural Asset ,Ako-
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市指定文化財
女房三十六歌仙画帖
にょうぼうさんじゅうろっかせんがじょう

区分
有形文化財
種別
絵画
数量
1帖
所有者
赤穂市教育委員会
(管理者) 田淵記念館
指定年月日
平成21年4月20日
指定番号
53
説明
 女房三十六歌仙画帖は、代表的な女性歌人三十六人の絵姿と、その和歌を書いた一帖の画冊である。見開きの右に和歌を、左にそれぞれの女房の絵姿を描いている。女房の各図には「岑信筆(印)」(印影は「狩野」・白文)とあり、浜町狩野家初代狩野岑信(寛文2年〜宝永5年・1662〜1708年)と知られる。和歌の筆者は「女房歌仙御筆者目録」が付属しており、外題近衛基熙を含め、36人の公卿が1人1首ずつ書いている。絵・書とも、当時の一流の人々の手になるものである。
 本画帖の制作年は、和歌の筆者の公卿達の官職から、宝永元年(1704年)から同2年(1705年)前半期と考えられる。画者狩野岑信が6代将軍徳川家宣から「松本」姓を賜り、「松本友盛」と名乗るのが、宝永4年(1707年)11月29日以降であるから、筆者の年代と矛盾しない。
 絵・書ともに画帖に貼付されている。
 絵はタテ20.0p、ヨコ24.7pの絹本に描かれる。描写は極めて細密、かつ色彩豊かで、そして丁寧に仕上げられている。中でも十二単の衣裳の描写の繊細さと優美さが相まって大変華麗である。画者岑信が大いに力を入れて描いたものといえよう。
 今日知られている岑信の作品は、非常に少なく十数点にすぎない。そうした中で、本作品は岑信の作例の一つとして重要な存在である。
 書は、当時の公卿36人の手になり、中でも近衛基熙・家熙父子は、文化人としてもよく知られる。家熙は予楽院と称し、歌・書・茶・画等に優れており、江戸期公卿中第一の文化人であったと言ってよいであろう。また、二条綱平も文化人であるとともに、かの尾形光琳・乾山兄弟のパトロンとしても著名な存在である。恐らく当時の一流の公卿が選ばれて、1人ずつ和歌を担当したものと思われる。
 この和歌を書いた色紙は、青金と赤金の金砂子で金雲を表現し、その上に墨書きしている。また、色紙の左右と上に草花を描いているが、どうやら色紙と同一紙のように見られる。つまり、大きな紙から草花の形に切り取っていると思われ、色紙の周りに別の紙に描いて貼付したのではないようである。極めて手の込んだ細工が施されており、他にこのような作品は知られていない。
 さらに、色紙を貼った台紙(画冊)も、全面にやはり青金と赤金の砂子(大・小取り合わせて)で金雲を表現している。そして全体には地文様として金砂子で雷文が表されるといった、これまた極めて豪華で優美な造りである。表紙の装幀やその四隅の金具は銀の透かし彫りで精緻な細工である。
 箱は二重箱で、内箱は黒漆塗、表に金で「女歌仙御手鑑 歌 公家衆寄合書 画 岑信筆」とある。箱の紐を止める鐶は、銀で32弁の菊を表現している。
 いずれも極めて豪華で手の込んだ造りである。恐らくは、将軍家か大名家からの注文であったと思われる。田淵家への伝来経路は不明であるが、明治以降に入手されたものと考えられる。
 以上のように、本画帖は大変貴重なもので市の文化財として指定するに十分であると考えられる。

    [資 料]
◎ 狩野岑信について
 岑信は系譜のとおり、狩野派直系で永徳の孫尚信、その子常信の次男として寛文2年(1662年)に生まれた。奥絵師の4家の一つ浜町狩野家の祖となる。元禄元年(1688年)に後の6代将軍徳川家宣に召し出され、その寵を受け絵の御用をつとめた。奥医師並となり200俵20人扶持を受け、両国広小路横山町に250坪の屋敷を拝領した。狩野総本家である中橋狩野家を凌いで、狩野家上席を占め、また、宝永4年(1707年)には「松本」の苗字を賜り、「松本友盛」と称することとなる。宝永5年(1708年)12月3日、47歳にして病死した。
 絵の仕事は徳川家宣の命によるものが多かったためでもあろうか、今日知られる作品は極めて少ない。ために岑信の研究も全く行われておらず、その作風も明らかにされていないのが実状である。

◎ 和歌の筆者について
 別添の「女歌仙御筆者目録」のとおり以下の人々である。
 小野小町・鷹司関白兼熈、式子内親王・近衛左大臣家熈、伊勢・伏見中務卿邦永親王、宮内卿・妙法院宮尭延親王、中務・曼殊院宮良応親王、周防内侍・今出川左大将伊季、斎宮女御・久我権大納言通誠、俊成卿女・二条内大臣綱平、右近・広橋権大納言豊忠、堀川・油小路権大納言隆真、道綱母・徳大寺権大納言公全、丹後・中院内大臣通茂、馬内侍・万里小路権大納言淳房、越前・松木権大納言家顕、赤染衛門・姉小路権大納言公量、讃岐・平松権中納言時方、和泉式部・中院権中納言通躬、小侍従・葉室権中納言頼重、女蔵人左近・大炊御内権中納言経音、下野・醍醐権中納言昭 、紫式部・裏松権中納言意光、弁内侍・西洞院権中納言時成、小式部・櫛笥権中納言隆慶、少将内侍・藤谷権中納言房茂、伊勢太輔・風早権中納言実種、太輔・外山宰相光顕、清少納言・石井宰相行豊、小宰相・飛鳥井宰相雅豊、大弐三位・穂波宰相経尚、高倉・坊城宰相俊清、高内侍・東園宰相基長、中務言典侍・日野西宰相国豊、一宮紀伊・押小路宰相公音、御匣・梅小路宰相相共方、相模・九条右大臣輔実、少将・近衛前関白基熈、外題・近衛基熈。以上36人の手になる。


(上記は指定時の文章です)

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巻頭写真1
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