兵庫県赤穂市の文化財 -the Charge for Preservation of Caltural Asset ,Ako-
−赤穂城跡、赤穂の歴史民俗、文化財、観光、名所旧跡、遺跡、発掘調査、考古学などなど−

文化財ニュースNo.13


発行 赤穂市教育委員会
編集 生涯学習課文化財係(赤穂市加里屋81番地 0791-43-6962)
平成18年4月19日

 このページでは、平成17年度に赤穂市教育委員会が行った事業を総括しています。
最新ニュースは、別ページでご紹介していますので、下の見出しをご覧ください。


最新ニュース

新指定文化財の紹介
真光寺旧蔵・柴原家文書
東有年・八幡神社祭礼
報告書刊行
木虎谷11号墳発掘調査報告書
講演会情報
有年考古館による講演会開催

1 赤穂城跡整備

 赤穂市教育委員会では、昭和58年度より継続的に赤穂城跡の整備を行っています。近年は、全面発掘調査が行われた稀有(けう)な大名庭園として名高い二之丸庭園(本丸庭園とともに国名勝指定)の整備を、史跡(文化財)と都市公園の整備事業として行っています。

 平成16年度には檜皮葺きの浮玉堂が完成し、目に見える形で整備が進んできました。今年10月の「のじぎく兵庫国体」開催中に行う一部公開に向けて、鋭意整備中です。

 平成17年度事業は、主に池泉の護岸修理や造成工事を行い、庭園に備えられる築山(つきやま)なども造られました。また発掘調査で見つかった花粉の分析結果に基づいて、植栽も一部行われ、ようやく大名庭園らしい姿を取り戻しつつあります。

 このほか、台風被害によって被害を受けていた三之丸城壁の修理もようやく完了しました。また平成15年度に修理を行った本丸北西部石垣の修理工事報告書も刊行しました。


2 指定文化財修理

 赤穂市教育委員会では、指定文化財の修理に対して補助金を交付しています。平成17年度は、3件の文化財保存修理が行われましたので、ご紹介いたします。

田淵氏庭園
 田淵氏庭園は、赤穂市御崎にある庭園で、国名勝に指定されています。これまでにも、昭和63年度以降、茶亭の解体復元修理や自動火災報知設備の設置など、庭園を継続的に保存整備しており、平成17年度は茶室「明遠楼」背後の石垣修理に先立つ石垣写真測量や樹木伐採を行いました。
 
 田淵氏庭園は、山麓の傾斜地に立地しているため、上段にある茶亭「明遠楼」が建つ平坦面の山側は高さ4m、の石垣が構築されています。この石垣が経年の雨水・土圧の影響によって「はらみ出し」が進行し、崩壊の危険性が生じています。この石垣は茶亭と近接しているため、万一石垣が崩壊すれば、茶亭にも甚大な被害が予想されることから、積替え修理が計画されています。
 また、茶亭である明遠楼の周辺に繁茂する樹木が石垣等を破壊するおそれがあり、これら危険樹木についても伐採を継続的に行っています。
 平成18年度には、石垣の積替え修理が実施される予定です。

修理箇所周辺の田淵氏庭園
 

坂越船祭り祭礼用和船船倉
 坂越船祭りは、「記録作成等の措置を講ずべき無形の民俗文化財」として国指定択されている祭りです。祭りに使われる和船は、船倉1棟とともに兵庫県指定文化財となっています。船倉は、江戸時代以来長らく風雨に耐え、中に納められた和船を守ってきましたが、建物の老朽化が著しく、平成16年1月より保存修理工事を行ってきました。
 修理工事は、一部に現代工法による補強を施しながらもほぼ往時の姿を取り戻し、昨秋でようやく完了しました。この船倉は、祭礼用和船を格納する役割だけでなく、隣にある御旅所とともに、生島樹林と一体となって坂越浦の景観を形作る上で重要なものと位置づけられます。
 今回の修理工事により現在の姿を保ち続けることができ、瀬戸内海三大船祭りの1つである坂越船祭りを後世に伝えてくれることでしょう。

有年家長屋門
 有年家長屋門は、平成15年4月に市指定文化財となったもので、市内で赤穂城内を除き、唯一の江戸時代から残る長屋門です。有年家長屋門は、二階の出窓剥落による壁の一部の剥離をはじめ、主家全体の傾きや、シロアリ被害による腐食、その他老朽による損傷が大であったため、早急な保存修復が必要とされていました。
 
 そこで一部解体復元工事が平成16年度から開始され、平成18年度を完成年度として実施されています。平成17年度は木工事が主に行われ、外観がだいぶ整いました。

3 発掘調査

 平成17年度、赤穂市教育委員会ではいくつかの発掘調査を行いました。ここでその概要をご紹介いたします。

野中遺跡確認調査
 10月〜11月に行った発掘調査です。確認調査とは、遺跡があるかどうかを把握するために、小規模な発掘調査区を広い範囲にいくつか設けて行うものです。調査の結果、今回の調査地では遺跡がないことがわかりました。このような地道な調査も、赤穂市の歴史を語る上で欠かせないものです。
 
赤穂城跡発掘調査
 さきに触れた赤穂城跡整備に伴う発掘調査です。二之丸庭園整備や、三之丸石垣修理に伴って行われました。とくに三之丸石垣は、昨年の台風によって崩落してしまった城壁の修理に伴うもので、発掘調査によって石垣の構築方法をはじめ後世の改修後、新たな腰石積みの検出など、さまざまな成果を挙げることができました。
 
伝大石良雄仮寓地跡(おせど)確認調査
 1月から3月にかけて行った発掘調査です。尾崎地区では、これまで発掘調査が行われたことが少ないため、遺跡がどれだけ残っているのかを確認する調査を行いました。その結果、江戸時代の地面は現在より80cmも低く、現在の地面は後に造成されたものであることがわかりました。江戸時代の地面では建物遺構に伴う礎石がいくつか見つかり、大石内蔵助の仮の住まいを偲ばせるものでした。

おせどの発掘調査
 
立会調査
 赤穂市教育委員会では、文化財保護法にもとづき、周知の遺跡内において地面を掘削する工事を行う際には、書類の提出を義務付けています。その中で工事を行う際に、必要と認めたとき、工事中に調査員が立ち会っています。これらも、遺跡の範囲や遺構面の高さを把握するために必要な調査ですので、今後ともご協力をよろしくお願いいたします。

4 標柱・看板設置

 赤穂市教育委員会では、赤穂市文化財保護連絡員と協力しながら、各地の説明看板や標柱を整備しています。今年度は2ヶ所に説明看板を、11ヶ所に文化財標柱を設置しました。詳細は看板設置情報をご覧ください。


5 保存処理

 発掘調査で出土した木製品は、たえず水分に漬けておかないと、収縮して破損してしまいます。そこで、水分を化学薬品に置き換えることにより、常温での保存が可能になります。赤穂市教育委員会では、毎年度、少しずつ木製品の保存処理を行っています。今年度は、赤穂城跡及び赤穂城下町跡から出土した木簡(字の書かれた木の板)を保存処理しました。


赤穂城下町跡(現・加里屋まちづくり会館)で見つかった木簡

6 展望

二之丸庭園の一部公開と薪能の開催!!
 平成18年度は「のじぎく兵庫国体」が開催され、赤穂市では剣道競技が行われます。この国体開催にあわせ、二之丸庭園の一部公開を予定しています。
 二之丸庭園は、赤穂城跡二之丸にある面積約18,000uの規模をもつ国名勝指定の大名庭園で、赤穂城跡を築城した浅野長直(1645-1671治世)が築庭したものです。元禄の赤穂事件による浅野家断絶後、屋敷などが後に建てられなかったことから、当時の遺構が良好に残っていました。
 赤穂市教育委員会では、平成8年度より二之丸庭園の発掘調査に着手し、庭園全貌を明らかにすることができました。その後、平成14年度からは庭園の復元整備を実施しております。
 今年度に行う庭園の公開は、上流部の大石頼母助庭園に留まるものとなっていますが、このお披露目、こけら落としとして、薪能を9月30日に予定しております。
みなさまのご鑑賞をお待ちしております!!

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巻頭写真1
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−連絡先−
赤穂市教育委員会事務局文化財課文化財係
〒678-0292 兵庫県赤穂市加里屋81番地
TEL:0791-43-6962 FAX:0791-43-6895
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